初めて公開されたエステサロン
私は市波コースで噛み合わせの勉強を始めてから、もしやと思い、兄の噛み合わせを慎重に調整してみた。
すると、あれだけ苦しめられていた肩凝りが数カ月後にはウソのように消えてしまった。
兄はラボ(技工所)に勤めていた頃、上下左右の歯を一遍に一〇本以上も治療したことがあった。
たまたま、歯が1本抜けたままになっていたので、いちばん削り方のうまい歯科医に治療をしてもらおうと思った。
自分で被せ物を作ればタダだし、この際だからということで一度にやってしまったのである。
これが原因だったことは言うまでもない。
兄のエピソードからもわかるように、全身に病的な症状が出た場合に、目や鼻に原因があると疑う医者はあっても、歯に原因があると考える医者は皆無に近い。
そもそも医科の医師は、口の不調和が全身に影響を及ぼすことを知らない。
だから、口についての意識はまったく抜け落ちてしまっている。
まさに、噛み合わせと顎機能は、現代医学の死角である。
医学界においても、患者さんの意識においても、口は目や耳や鼻に比べて、ひじょたとえば、目の使いすぎが原因で頭痛や肩凝りが起きたり、鼻づまりで集中力が鈍ったりするということは誰でも知っている。
だが、口の中のことに関しては、なぜか全身への影響が無視されている。
義歯が欠けようが、奥歯が抜けようが、そのまま何カ月も放っておいて平気な人がいる。
目や耳ならば、絶対にそんなことはしないだろう。
人体の中で、口の中のことは粗雑に扱われ、ことに歯になると、まるで全身とは独立して存在している部位のように扱われている。
しかし、口は命に直結する器官であり、歯は全身の一部であることは間違いない。
これは、けっして比境的な表現ではない。
人体を発生学的に捉えてみれば、理解しやすい。
そもそも、人間が病気に躍りやすくなったのは、直立して二足歩行をするようになったからだという説がある。
直立して歩くために、頭をいちばん上にもってこざるをえなかった。
しかも、頭の重さは、血液が通っている状態では少な-見積もっても数キログラムにもなる。
よく考えてみると、こんな重いものが、いちばん上に乗っているのは、やはり不自然であり、不合理である。
どんな建築物でも、重いものを上にもってくるということはない。
そんな不安定なことをすれば、事故のもとになる。
同様に、頭のような重いものが人体のいちばん上にあるという構造が、肩凝り、腰痛、さらには循環器系など、さまざまな病気を起こす誘因になっているのである。
だが、私たちは普段、この重い頭を意識しないで暮らしている。
それが可能になったのは、首の周囲に強靭な筋肉がついているからである。
ところで、進化論によると、人間の進化の過程を遡っていけば魚の時代にたどりつく。
このことはよく知られているが、実は、岨噂筋をはじめとした頭頚部の筋肉というのは、魚の時代には内臓筋に相当し、ここには呼吸筋としてのエラの部分が含まれている。
つまり、いちばん大切な筋肉なのである。
逆に言えば、魚の内臓筋やエラの筋肉が進化して、人間の頭頚部の筋肉になったわけで、頭頚部の筋肉は、言わば命に直結する存在なのである。
さらに内臓筋やエラの筋肉は呼吸筋、そして肩、肋間から旺門にいたるまでの筋肉にも進化している。
つまり、岨噛筋も呼吸筋も肩や虻門の筋肉も、元をたどれば同じものに由来しているわけである。
となると、噛み合わせバランスの不調和によって岨噴筋が障害を受けると、肩や肝門の筋肉に影響が及んでも少しも不思議ではないことがわかって-る。
このことは、はっきりとした関係が解明されていないものの、噛み合わせバランスを改善すると痔がよくなったという実例からも、何らかの関連はあると見なしていいことになる。
このように、歯はけっして独立して存在しているわけではない。
あくまでも全身の1部だということが、今、認識の根底として周知されなければならないのである。
現代日本人の「歯の寿命」は、前歯が六六年、犬歯が七一年、小臼歯が六〇から六一年、大臼歯が四九年から五一年という厚生省の調査結果がある。
これはあ-までも平均値であり、歯の寿命は個人差が大きいが、男性の歯の寿命も女性と大差ない。
歯の寿命は、人生五〇年だった頃から、ほんの少ししか伸びていない。
ところが、今や日本人の平均寿命は、男性が七七歳、女性は八四歳と大きく伸びた。
「歯の寿命」はほとんど変わらないのに、体全体の寿命はどんどん伸びたのである。
このた軌現在では、死ぬまで親不知を除いた二八本の自前の歯を一本も失うことなく、すべて残したという人は皆無に近い。
ほとんどの人は自分の歯を失い、部分入れ歯や総入れ歯のお世話になる。つまり、近代歯学には約100年の歴史があるが、天然の歯を死ぬまで保たせるノウハウは、まだ生まれていないのである。
天然の歯を残す知識と技術がないのなら、せめて天然歯に近い「入れ歯」を作らなければ、何のための歯科だかわからない。
はたして、きちんとした入れ歯作りは行われているのか。
残念ながら、答えは「ノー」である。
これについては後で述べていくことになるが、その前に人はどのように歯を失っていくか、そのことから述べておきたい。
先ほどの歯の寿命の調査結果を別の視点から見ると、人生の中でいちばん体の無理が利-二〇代、三〇代には歯を失うことがないということがわかる。
若いうちから歯を失うことはめったにないのである。
老化によって歯が抜ける場合、よく耳にする「四〇歳過ぎたあたりから、ガクッと体力が落ち、若い頃のようにはいかない」という年代になると、まず大臼歯を失う。
四〇代になると、歯の喪失にともなって食事の好みが変わることが多い。
残った歯で食べられるものを噂好するようになるのである。
「若いときのように硬いものを食べられな-なった」と嘆-人がいるが、これは自然な現象であり、そのときどきの歯の状態で食べられるものが、その人の体に合っていると考えたほうがいい。
五〇歳を過ぎればさらに歯を失い、大部分の人が部分入れ歯を入れるようになる。
七〇歳を過ぎると、約四〇パーセントの人が総入れ歯となるようだ。
老化現象の一つとして歯が抜けてい-場合、一本の歯が抜け、やがてもう一本抜けるといったように徐々に抜けてい-。
けっして何本もの歯が一度に抜けることはない。
だが、若いうちから過剰な歯科治療を積極的に受けていると、同時に数本の歯を失うことが多い。
四〇代前で失う人もいる。
そして最終的には、上の歯は一本もないのに、下の歯は一四本全部揃っているといった自然の摂理に反する状態が作り出される。
つまり、歯科は歯を保つノウハウを獲得できていないどころか、不必要な治療で歯の寿命を縮めているうえ、人間の体にとって不自然な状態を作り出しているのである。
歯を失う大きな原因は歯周病である。
早いうちに総入れ歯になる人と老齢でも総入れ歯を使うことのない人がいるが、若いときに歯が次々に抜け落ちる最大の原因は歯周病である。
歯周病になりやすい人は、上下とも総入れ歯になるかどうかは別にしても、入れ歯を使うことになる可能性がきわめて高い。
歯周病とは読んで字の如-「歯の周りの病気」、つまり歯を支えている組織の病気のことで、歯槽膿漏と言われていた。
歯を支えているのは歯根膜と歯槽骨である。
歯と歯肉の間に歯垢が溜まり、炎症を起こしている状態は歯肉炎と呼ばれる。
歯肉炎は歯茎が腫れただけで、まだ歯根膜と歯槽骨は冒されていない。
だが、歯肉炎がさらに進行すると歯周病になる。
歯周病菌が繁殖し、膿が溜まり、歯と歯肉の間はどんどんと深く広がってゆく。
歯根膜と歯槽骨の崩壊が始まれば、歯がグラグラしてくる。
さらに崩壊が進むと、壊れた組織が歯を支えきれなくなり、その歯は抜け落ちてゆく。
歯周病はある面で老化現象の一つであり、年をとると皮膚のバリやツヤがなくなっていくのと同じようなものである。
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